REPORT図面、地図や部品を±0.1mmの寸法精度で測りたい その方法

高精度に測りたいとき、ターゲット(図面や地図やアート作品や加工部品)をどの程度精度良く設置すべきか?
これは、ターゲットのデジタル画像を撮像するカメラマン(もしくはスキャナオペレータ)が、ターゲットを設置する場合、その設置精度をどの程度留意すべきかの計算です。
その撮影作業の「目標精度」について検討します。

case1.ターゲットとレンズの距離変動

まず、デジタルカメラを使用し、目標寸法精度を±0.1mmに設定して撮影する作業を考えます。
例えば、レンズからターゲットまでの距離をL=1000mmと仮定し、 カメラを三脚に固定してターゲットにピントを合わせ撮影します。
この作業を繰り返し、ターゲットを差し替えて、撮影作業を続けます。

この時、ターゲットとカメラの距離設置精度が、撮影倍率に与える影響を評価すると、撮影距離の変動が、Δh=±1mmの時、その変動によって生じる寸法誤差(歪み)は、 ±1/1000だけ影響を受けます。(Figure1-1参照)
具体的には、1メートルの長さの部品図面であれば、1mmのズレが生じます。
よって、目標寸法精度 が±0.1mmである場合、図面の距離設置精度は、±0.1mm未満に納めなければなりません。
実際には、ターゲット(図面、地図)を次々と入れ換えて撮影するシーンを考えると、図面の設置精度を±0.1mmに納めることは至難でしょう。
紙の厚さは薄い紙でも0.05mm(=50μm)程度あります。紙2枚の厚さが、目標の寸法精度となる計算です。

テレセントリックレンズを使うと距離変動に対しての寸法誤差は原理的には発生しません。歪みはゼロです。
ただし、当然ながら焦点のボケは起きます。被写界深度内であれば、焦点ボケは無視できます。(Figure1-2参照)

case2.ターゲットが傾斜している場合

次に、ターゲットが傾いて設置される場合を考えてみます。 例えば、図面を拡げた際に、皺や曲がりの癖で、ターゲットが+1mm浮き上がった場合などを想定しています。

ターゲットの設置精度に、1mmの傾斜が有る場合、その寸法歪みは、1/1000だけ影響を受けます。
1メートルの図面であれば、1mmのズレが生じます。先ほど、距離変動を検討したのと同じ結果です。(Figure2-1参照)
オルソ・スキャナの場合はどうでしょうか。
実際に計算すると、0.5×10^(-6)程度で、無視できることが判りました。

0.5×10^(-6)の歪みとは、1メートルの図面において、0.5μm程度の歪みです。緑色の光の波長程度です。

まとめ

 従来こうした課題を解決するために採用されていた対策は、撮影距離を長くすることです。
かつて、オフセット印刷用の網点スクリーンを生成するための版作成カメラレンズの撮影距離は、数メートルにも及び、十分な距離を離して撮影していました。
175線の網点にて、0.145mmピッチの線ですので、今回考察している寸法精度 ±0.1mmに近い精度です。
 この網点の版をYellow/Magenta/Cyan/Blackと4版重ね合わせるために高い寸法精度が要求されました。
今回、考察したとおり、テレセントリックレンズを使った撮影方法を採用することで、実質的に無限遠からの撮影に相当します。
 その結果、ターゲットの浮き、傾きに高精度の設置を要求することなく、比較的実現可能な容易な設置により、高い寸法精度(±0.1mm)の撮影が可能となることが判りました。
アイメジャーの開発した 『オルソ・スキャナ』は、ラインセンサとテレセントリックレンズを組み合わせた弊社独自の特許技術による撮影システムであり、 今回のようなターゲット(図面、地図、加工部品)などの測定や撮影用途に最適なイメージスキャナです。

詳しくは デジタルアーカイブ学会論文をご覧ください。
デジタルアーカイブ学会(2018.3)
非接触式イメージスキャナ「オルソスキャナ」の開発PDF(372KB)/デジタルアーカイブ学会誌